RFIDは、Radio Frequency IDentificationの略です。RFIDとRFタグの意味は次のとおりです。
RFIDは、RFタグとリーダライタを含みます。
RFタグは電子タグ、ICタグ、無線タグ、RFIDタグ等、様々な呼び方をされていますが、ここでは、JIS(日本工業規格)で定められている「RFタグ」に統一します。
人が持って、入退室管理、電子乗車券、決済用途等で使用する「非接触ICカード」も広義のRFIDですが、ここでは、物に付けて利用する「RFタグ」を中心に説明します。
RFタグ | 非接触ICカード | |||
---|---|---|---|---|
使われ方 | 物に付ける | 人が持つ | ||
形状 | コイン型 | カード型 | ||
円筒型 | ||||
ラベル型 | ||||
カード型 | ||||
標準化 | ISO/IEC JTC1 SC31/WG4、自動認識及びデータ取得技術 | ISO/IEC JTC1 SC17/WG8、識別カード及び関連装置 |
使用する周波数によって実現方法は異なりますが、RFタグとリーダ/ライタとの間のデータ伝送の原理は、ほぼ同じです。RFID装置における、データ伝送の原理を図2に示します。
方式
|
RFID |
光学的情報媒体 |
||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
電磁誘導方式 |
電波方式 |
バー |
2次元 |
|||||
中波 | 短波 | UHF | マイクロ波 | |||||
~135kHz |
13.56MHz |
433MHz |
900MHz帯 |
2.45GHz |
||||
読取性能 |
距離 |
~10cm |
~30cm |
~100m (電池付) |
~5m |
~2m |
~1m |
- |
データ量 |
ICチップの仕様による |
~20バイト |
~2kバイト |
|||||
データの書換え |
◎ |
× |
× |
|||||
複数一括読取り |
◎ |
× |
× |
|||||
流し読み |
◎ |
× |
× |
|||||
耐環境性 |
光 |
◎ | △ | △ | ||||
汚れ |
◎ | × | △ | |||||
水 |
◎ |
◎ |
○ |
△ |
△ |
△ |
△ |
|
遮断物 |
◎ |
◎ |
◎ |
○ |
○ |
× | × | |
金属 |
○ |
× |
◎ |
× | × |
◎ |
◎ |
|
価格 | △ |
○ |
× |
○ |
△ |
◎ | ◎ |
RFタグの特長は、データの書替えができること、汚れ等に強いこと、ある程度遮蔽物があっても交信ができることです。又、同時に複数の読取りが可能なことも、大きな特長です。これらの特長について、次の章で詳しく説明します。図3に、RFタグの周波数別の特長をまとめました。
周波数によって異なりますが、電波又は電磁誘導方式を使うので、電力供給及び、データ送受信のために接触端子を用いることなく、データの読み書きができます。どのくらいの距離から読み書きができるかは、周波数及び使用するリーダ/ライタ及びRFタグのアンテナの大きさ、環境条件(RFタグを、金属の近くに置くとか、水分の多いものに貼付する等)によって異なります。交信距離の目安は表2を参照してください。
金属以外のものであれば、リーダ/ライタとRFタグの間に存在しても、ほとんど影響を受けずにデータの読み書きができます。例えば、箱の中や、壁の向こう側に貼られたバーコード、2次元シンボルは読めませんが、RFタグの場合には、読み書きすることができます。この性質をRFタグの「透過性」といいます。
中波帯又は短波帯の場合には「透過性」を生かして、樹脂等で封止すれば、耐環境性の高いRFタグとすることができ、ユニフォームのクリーニング管理や、社員食堂の精算システムのような、食器に付けて洗浄されるような運用にも耐えられます。(マイクロ波帯及びUHF帯では、樹脂封止により通信距離に影響が出るので、注意が必要です。)
複数のRFタグの一括読み取り
いわゆる「アンチコリジョン(衝突防止)」機能のことです。 RFタグは、コリジョン(collision:衝突)を防止する仕組みを備えているため、複数のRFタグが、同時にリーダ/ライタの通信可能領域に入ってきても、正しくデータを読み書きすることができます。
なお、単純にユニークなIDだけを返信するRFタグでは、機能を簡素化するためにアンチコリジョン機能を持たないものもあります。
RFIDは、データ伝送方式によって、電磁誘導方式と電波方式の、大きく二つの方式に分類されます。それぞれの方式の特長を表3に示します。
方式 |
周波数 |
特長 | 課題 |
---|---|---|---|
電磁誘導方式 (磁界) |
135 kHz未満 13.56MHz |
|
|
電波方式 (電波) |
433 MHz 900 MHz帯 2.45GHz |
|
|
ISO/IECにおける標準化
RFIDに関する国際標準化の概要を説明します。バーコード、2次元シンボルやRFIDなどの自動認識技術は、ISO(国際標準化機構)/IEC(国際電気標準会議)のJTC1(合同専門委員会)で標準化を進めています。
RFIDに関する標準化は、JTC1の分科委員会の一つであるSC31(自動認識及びデータ取得技術)のWG4(RFID)が担当しています。図4に、審議対象と位置づけを示します。
RFIDで使用する周波数帯と関連する電波法規を表4に示します。
周波数 | エアインターフェース | コンフォーマンス | |
---|---|---|---|
135KHz未満 | ISO/IEC 18000-2 | ISO/IEC 18047-2 | |
13.56MHz | ISO/IEC 18000-3 | ISO/IEC 18047-3 | |
2.45GHz | ISO/IEC 18000-4 | ISO/IEC 18047-4 | |
860~960MHz | タイプA | ISO/IEC 18000-61 | ISO/IEC 18047-6 |
タイプB | ISO/IEC 18000-62 | ||
タイプC | ISO/IEC 18000-63 | ||
タイプD | ISO/IEC 18000-64 | ||
433MHz | ISO/IEC 18000-7 | ISO/IEC 18047-7 |
エアインタフェースは、タグとリーダ/ライタ間の通信仕様を規定し、コンフォーマンスは適合性仕様とも呼び、タグとリーダ/ライタの測定方法及び測定条件を明確にしています。
950MHz帯のRFIDは、2011年12月14日に実施された周波数割当計画の改正により 2018年4月1日以降は使用できなくなります。このため、新たに920MHZ帯がRFIDに割り当てられ、2012年7月25日以降使用が可能となりました。従って、現在950MHz帯で稼動中のシステムは、期限内に920MHz帯に移行する必要があります。なお、移行費用は今後950MHz帯を使用するソフトバンクモバイル株式会社が負担します。
433MHz帯は、以前はアマチュア無線が使用していたため日本では使用できませんでしたが、2007年の法令改正により国際輸送用途に限定して使用が認められました。主に港湾での使用が想定されていますが、場所の限定はありません。
また、民間団体であるGS1(EPCglobal)では、 900 MHz帯(UHF)と13.56 MHz (HF)のエアインタフェース規格を制定してRFIDの普及啓蒙を行っている。これらの規格はISOにも提案され、ISO/IEC 規格としても成立している(表5) 。
RFIDシステムを使用する際には電波法以外に、電波防護、EMC規格及び安全規格の規制に注意することが必要です。表5に、注意すべき規制の種類と概要をまとめます。
規制 |
概要 |
必須 |
任意 |
---|---|---|---|
電波法 | 意図的な電波放射 | ・電波法施工規則(周波数、電波強度、他) | ・ARIB標準規格 |
電波防護(1) |
・電波法 (安全施設) ・電波法施工規則 (電波の強度に関する安全施設) ・無線設備規則(人体における比吸収率の許容値) ・各種電波利用機器の電波が植込み型医療機器へ及ぼす影響を防止するための指針 |
・RCR STD-38 (電波防護標準規格) |
|
EMC(2,3) | 不要な電波輻射 | ・VCCI(4)・JIS C 61000(電磁両立性)(5) | |
安全 | 火災・感電の防止 |
・電気用品安全法 |
・JIS C 6950 (情報技術機器-安全性) |
RFIDは、電波の性質を利用しているため、その特徴をよく理解した上で、システムの導入を進めることが重要です。
システム設計をする際に注意すべき点を簡単にまとめます。これらの記述は、RFIDの定性的な特徴をまとめたものであり、機器によって、その程度は異なります。実際に使う機器、使用環境での検証のステップは必須です。
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