RFIDとは(技術編)



RFIDとRFタグ

用語の定義

RFIDは、Radio Frequency IDentificationの略です。RFIDとRFタグの意味は次のとおりです。

RFID
電波(電磁波)を用いて、RFタグのデータを非接触で読み書きするもの
RFタグ
電波(電磁波)を用いて、内蔵したメモリのデータを非接触で読み書きする情報媒体

RFタグとRFIDとの関係

RFIDは、RFタグとリーダライタを含みます。

図1 RFタグとRFIDとの関係

RFタグの呼称

RFタグは電子タグ、ICタグ、無線タグ、RFIDタグ等、様々な呼び方をされていますが、ここでは、JIS(日本工業規格)で定められている「RFタグ」に統一します。

非接触ICカードとの関係

人が持って、入退室管理、電子乗車券、決済用途等で使用する「非接触ICカード」も広義のRFIDですが、ここでは、物に付けて利用する「RFタグ」を中心に説明します。

表1 RFタグと非接触ICカードの比較
  RFタグ 非接触ICカード
使われ方 物に付ける 人が持つ
形状 コイン型 カード型
円筒型
ラベル型
カード型
標準化 ISO/IEC JTC1 SC31/WG4、自動認識及びデータ取得技術 ISO/IEC JTC1 SC17/WG8、識別カード及び関連装置
ICカードについての基礎知識はこちら
ICカードリーダ/ライタについてはこちら

RFIDの動作原理

使用する周波数によって実現方法は異なりますが、RFタグとリーダ/ライタとの間のデータ伝送の原理は、ほぼ同じです。RFID装置における、データ伝送の原理を図2に示します。

図2 RFIDの動作原理

  1. 1.リーダ/ライタのアンテナから、情報を電波又は磁界に乗せて送信します。
  2. 2.RFタグのアンテナがリーダ/ライタからの電波又は磁界を受信します。
  3. 3.整流(電波の場合)または共振(磁界の場合)により、RFタグのアンテナに電力が発生します。
  4. 4.発生した電力により、制御回路、メモリを動作させ、必要な処理を行います。
  5. 5.RFタグ内のデータを、電波または磁界に乗せてRFタグのアンテナから返信します。
  6. 6.リーダ/ライタのアンテナで、RFタグからの電波又は磁界を受信します。
  7. 7.リーダ/ライタの制御部で、電波または磁界から情報を取り出します。

他の自動認識媒体との比較

表2 RFタグと他の自動認識媒体との機能比較

 

 

方式

 

 

RFID

光学的情報媒体

電磁誘導方式

電波方式

 

バー
コード

2次元
コード

中波 短波 UHF マイクロ波

~135kHz

13.56MHz

433MHz

900MHz帯

2.45GHz

読取性能

距離
(代表値)

~10cm

~30cm

~100m

(電池付)

~5m

~2m

~1m

データ量

ICチップの仕様による

~20バイト

~2kバイト

データの書換え

×

×

複数一括読取り

×

×

流し読み

×

×

耐環境性

汚れ

×

遮断物

× ×

金属

×

× ×

価格

×

RFタグの特長は、データの書替えができること、汚れ等に強いこと、ある程度遮蔽物があっても交信ができることです。又、同時に複数の読取りが可能なことも、大きな特長です。これらの特長について、次の章で詳しく説明します。図3に、RFタグの周波数別の特長をまとめました。

図3 RFタグの位置づけと特長



RFIDの特長

非接触通信

周波数によって異なりますが、電波又は電磁誘導方式を使うので、電力供給及び、データ送受信のために接触端子を用いることなく、データの読み書きができます。どのくらいの距離から読み書きができるかは、周波数及び使用するリーダ/ライタ及びRFタグのアンテナの大きさ、環境条件(RFタグを、金属の近くに置くとか、水分の多いものに貼付する等)によって異なります。交信距離の目安は表2を参照してください。

透過性

金属以外のものであれば、リーダ/ライタとRFタグの間に存在しても、ほとんど影響を受けずにデータの読み書きができます。例えば、箱の中や、壁の向こう側に貼られたバーコード、2次元シンボルは読めませんが、RFタグの場合には、読み書きすることができます。この性質をRFタグの「透過性」といいます。
中波帯又は短波帯の場合には「透過性」を生かして、樹脂等で封止すれば、耐環境性の高いRFタグとすることができ、ユニフォームのクリーニング管理や、社員食堂の精算システムのような、食器に付けて洗浄されるような運用にも耐えられます。(マイクロ波帯及びUHF帯では、樹脂封止により通信距離に影響が出るので、注意が必要です。)

複数のRFタグの一括読み取り

いわゆる「アンチコリジョン(衝突防止)」機能のことです。 RFタグは、コリジョン(collision:衝突)を防止する仕組みを備えているため、複数のRFタグが、同時にリーダ/ライタの通信可能領域に入ってきても、正しくデータを読み書きすることができます。
なお、単純にユニークなIDだけを返信するRFタグでは、機能を簡素化するためにアンチコリジョン機能を持たないものもあります。
 

RFIDの種類と特長

RFIDは、データ伝送方式によって、電磁誘導方式と電波方式の、大きく二つの方式に分類されます。それぞれの方式の特長を表3に示します。

表3 RFIDのデータ伝送方式と特長
方式

周波数

特長 課題

電磁誘導方式

(磁界)

135 kHz未満

13.56MHz

  • 雨、氷、塵埃、鉄粉の影響を受けにくい

  • 悪環境条件でも使用可
  • アンテナの指向性が広い
  • 交信範囲が広い。
  • 非伝導体(人体・ガラス・木材等)への浸透性が高い

  • 外来ノイズが多く、影響を受けやすい

  • 金属の影響

電波方式

(電波)

433 MHz

900 MHz帯

2.45GHz

  • 交信距離が長い(特に電池ありの場合)

  • 指向性があり、交信エリアの限定が比較的容易


  • 無線LAN、Bluetoothとの干渉(2.45GHz)

  • 金属による反射および水の吸収

RFIDに関する標準化動向

ISO/IECにおける標準化
RFIDに関する国際標準化の概要を説明します。バーコード、2次元シンボルやRFIDなどの自動認識技術は、ISO(国際標準化機構)/IEC(国際電気標準会議)のJTC1(合同専門委員会)で標準化を進めています。
RFIDに関する標準化は、JTC1の分科委員会の一つであるSC31(自動認識及びデータ取得技術)のWG4(RFID)が担当しています。図4に、審議対象と位置づけを示します。

図4 ISO/IEC JTC1/SC31におけるRFIDの審議対象と規格番号

RFIDで使用する周波数帯と関連する電波法規を表4に示します。

表4 周波数毎のISO/IEC規格と関連する電波法規(日本)
周波数 エアインターフェース コンフォーマンス
135KHz未満 ISO/IEC 18000-2 ISO/IEC 18047-2
13.56MHz ISO/IEC 18000-3 ISO/IEC 18047-3
2.45GHz ISO/IEC 18000-4 ISO/IEC 18047-4
860~960MHz タイプA ISO/IEC 18000-61 ISO/IEC 18047-6
タイプB ISO/IEC 18000-62
タイプC ISO/IEC 18000-63
タイプD ISO/IEC 18000-64
433MHz   ISO/IEC 18000-7 ISO/IEC 18047-7

エアインタフェースは、タグとリーダ/ライタ間の通信仕様を規定し、コンフォーマンスは適合性仕様とも呼び、タグとリーダ/ライタの測定方法及び測定条件を明確にしています。
950MHz帯のRFIDは、2011年12月14日に実施された周波数割当計画の改正により 2018年4月1日以降は使用できなくなります。このため、新たに920MHZ帯がRFIDに割り当てられ、2012年7月25日以降使用が可能となりました。従って、現在950MHz帯で稼動中のシステムは、期限内に920MHz帯に移行する必要があります。なお、移行費用は今後950MHz帯を使用するソフトバンクモバイル株式会社が負担します。
433MHz帯は、以前はアマチュア無線が使用していたため日本では使用できませんでしたが、2007年の法令改正により国際輸送用途に限定して使用が認められました。主に港湾での使用が想定されていますが、場所の限定はありません。
また、民間団体であるGS1(EPCglobal)では、 900 MHz帯(UHF)と13.56 MHz (HF)のエアインタフェース規格を制定してRFIDの普及啓蒙を行っている。これらの規格はISOにも提案され、ISO/IEC 規格としても成立している(表5) 。
RFIDシステムを使用する際には電波法以外に、電波防護、EMC規格及び安全規格の規制に注意することが必要です。表5に、注意すべき規制の種類と概要をまとめます。

表5 RFIDに関する各種規制

規制

概要

必須

任意

電波法 意図的な電波放射 ・電波法施工規則(周波数、電波強度、他) ・ARIB標準規格
電波防護(1)

・電波法 (安全施設)

・電波法施工規則 (電波の強度に関する安全施設)

・無線設備規則(人体における比吸収率の許容値)

・各種電波利用機器の電波が植込み型医療機器へ及ぼす影響を防止するための指針

・RCR STD-38

(電波防護標準規格)

EMC(2,3) 不要な電波輻射 ・VCCI(4)・JIS C 61000(電磁両立性)(5)  
安全 火災・感電の防止

・電気用品安全法

・JIS C 6950

(情報技術機器-安全性)

  1. 1.人体が電波にさらされた場合、好ましくない作用を及ぼさないようにすること。
  2. 2.Electro-Magnetic Compatibility(電磁両立性)
  3. 3.EMC:EMI(Electro-Magnetic Interference。他の電子機器の動作に影響を及ぼす電磁妨害)対策とEMS(他の機器からの電磁妨害に対する耐力)対策が両立できること。
  4. 4.VCCI:Voluntary Control Council for Information Technology Equipment(情報処理装置等電波障害自主規制協議会)
  5. 5.EMS: Electro-Magnetic Susceptibility(電磁感受性)

導入時の注意点

RFIDは、電波の性質を利用しているため、その特徴をよく理解した上で、システムの導入を進めることが重要です。
システム設計をする際に注意すべき点を簡単にまとめます。これらの記述は、RFIDの定性的な特徴をまとめたものであり、機器によって、その程度は異なります。実際に使う機器、使用環境での検証のステップは必須です。

RFタグの読み書き性能は、金属の影響を受ける
RFタグを金属面に貼付すると、読めなかったり通信距離が短くなる場合があるので、RFタグを金属面から浮かしたり金属対応タグの採用を検討することが必要です。
複数のRFタグが重なると、タグのアンテナ間の干渉により、読み書きができなくなる場合がある
RFタグ同士重ならない状態で読み書きする運用を検討することが必要です。
複数のアンテナ間の距離が近いと、干渉によりRFタグの読み書きができなくなることがある
無線LANのアクセスポイントと同じように、相互干渉を避けるため、アンテナ間の距離をある程度離して設置することが必要です。
アンテナとRFタグの位置関係によって読取り性能が低下することがある
電波、電磁誘導の性質上、アンテナとRFタグの面の位置関係は、平行のときが最も通信条件が良くなります。逆にアンテナの面に対する角度が大きくなると通信距離は短くなります。
周波数によって、交信距離、指向性、水分の影響等に違いがある
各周波数の特徴を十分理解して、用途に応じた周波数を選択することが重要です。(図5参照)
RFタグを貼付する物により、読み取り性能が変わることがある
特にUHF帯のRFタグの場合、RFタグを貼付する物の材質の違いにより読み取り性能が変化しますので、貼付する物に合ったRFタグを選択することが重要です。
RFタグやアンテナの周囲環境で読み取り性能が変わることがある
電波方式のRFID(マイクロ波、UHF)の場合、電波が床や壁、その他の物体に反射して想定以上の距離まで電波が到達し、想定外のRFタグを読み取る場合があるため、電波出力の調整や電波吸収材の使用を検討することが必要です。
図5 RFタグの周波数別特徴比較

導入前の重要なステップ

RFID運用の最適な環境を作るために、使用環境での読み取り検証は必須のステップです。RFIDは、タグの種類や機器、お客様の製品、使用環境、すべての要素がマッチングすることにより最大限の効果を発揮します。さらに、思ったような効果が出ないことを防ぐためにも、実証実験を行うことが重要です。タグの貼り付け位置は適切か、読み取る物と人の動きは適切かなどを確認することで、本運用に即した環境構築を行うことが可能です。このようにRFIDの活用において、読み取り検証・実証実験が重要な成功の鍵となります。
 

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