本物の高速性を追求したHSR

「速く動き始める」「速く動き続ける」「正確に止まる」という3条件をクリアしたHSRシリーズ。
その開発は、現場が求めていたロボットの性能を極限まで追求してきた
制御システム事業部技術企画部製品企画室のメンバーたちが担ってきた。
室長の澤田洋祐に取材し、プロジェクトの全容を聞いた。

制御システム事業部 技術企画部製品企画室室長 澤田 洋祐

瞬間最大速度より1分間の仕事量にこだわる

HSR(水平多関節ロボット)はこれまでにない高速性を有し、しかも軽さ、剛性が強化された新型高速スカラロボットだ。澤田洋祐は製品企画室の室長として、この製品の企画チームを束ねてきた。「ロボットの性能はカタログ値では読み切れないところがあります」。物理式により算出されたチャンピオンデータと、実際にロボットを現場に導入して動かしてみるのとでは、その動作に違いが出るというのだ。
高速で動き続ける、しかも、「ピタッ」と静止する。その制御が行えるようになることが工場内のロボットには求められていた。澤田たちは、それまで業界で重視されてきた「瞬間最大速度」ではなく、新たに「CPM(Cycle Per Minute)= 1分間の仕事量」を重視して開発を進めることに決めた。速度競争からの脱却。それは、大きな決断だった。しかし、顧客の購入後のとまどいに対して真摯に向き合う、誠実な決断だった。

「動き」を最重要ととらえ、制御視点で設計開発

高速で動くロボットは一般的に、時間が経てばモータが熱を持ち、作業における精度が低下する。澤田たちは、そんなときでも高速で「動き続けられる」ロボットの開発を目指した。すべては、顧客が安心して導入できる安定的な動きをするロボットづくりのために。しかし、目標実現のためには、ロボットアームの動きを適切にコントロールできる制御設計が必要だった。通常、ロボット開発は機械設計から始め、構造を決めてから制御設計に移るものだが、今回は開発プロセスを抜本的に変えた。理想とするロボットアームの前後の動きを、制御設計により決定したのだ。「『どう動くか』が、作業の質を決めると考え、制御視点で開発を進めました」と澤田。メンバーも同意し、制御設計後に、その動きにふさわしいロボットアームの構造を決めた。

軽量化と剛性強化、相反する要素の両立で
高速動作を実現

開発の過程で、澤田たちの前には乗り越えなければならない複数の壁があった。中でも一番大きかったのは軽量化と剛性強化の両立だった。相反する2つの要素を両立させた設計。さらに、連続稼働によりモータが熱を持つため、放熱性も考慮する必要があった。「アームを軽くするため、容量の大きいモータの配置はアーム部ではなくベースユニット部に集約。軽さは保ちつつ、剛性向上のために機械設計を見直しました。さらに、ベースユニット部は高速で動くモータにより熱がこもりやすくなるため、高効率に熱伝導し放熱させるなど、さまざまな対策を行いました」。メンバーはこれらの課題をコンピュータ上でのシミュレーションにより解決していった。

ノウハウを社内に蓄積。
内製化による品質の高さで差別化

「CPM(Cycle Per Minute)= 1分間の仕事量」の能力が最大の特徴であるHSRシリーズを完成させた澤田たち。そこには、デンソーウェーブならではの知見が集約されていることも見逃せない。これまでロボットアームとコントローラを内製してきたデンソーウェーブでは、アームの特性(質量特性やイナーシャ等)を開発チームのメンバーがくまなく把握している。そのため、ロボットに起きる事象を事前に予測して対策を行い、対策を生産性の向上に結び付けるビジョンを明確に描いて開発を進めることができているのだ。例えば、振動においては振動前に動きを制御する仕組みを整えることで、正確に振動を収束させ、次の動作に迅速に移ることができ、結果的にサイクルタイム向上に寄与できている。

自動車以外の業界でもユーザ目線に立った開発を

ロボットを導入した顧客のとまどいを解消しようと始まった、カタログ値との闘い。HSRシリーズが完成した今、澤田たちは新たなフィールドでの挑戦を目指し歩んでいる。「ターゲットとしてきた自動車・電機業界だけでなく、食品・医薬品・化粧品の分野でパッケージング工程での活用も視野に入れています。また、三品業界ですでに用いられている商品のコンベアトラッキング機能(ロボットがコンベアの動きに合わせて動く機能)に、HSRを組み合わせて生産ラインがよりスムーズになるようにしたいと考えています」。さらに、高速性と並んで澤田たちが重視したいのは操作性だという。「ティーチングペンダントは、認知工学に基づき、徹底的に使いやすさにこだわったインターフェースとなっており、ユーザがストレスのない操作性を実現することに今後も貢献していきます」。
 

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